薬をもらうため、母を定期的に病院に連れて行っています。
少し遠方の病院なのですが、ひそかに楽しみにしていることがあります。
それは病院近くの喫茶店です。
大通りから一本入った小道の、住宅街の奥にポツンと黒板が立っていて、この黒板が無かったら見過ごしていたでしょう。
あまり人気の無いこんな片隅でお店を開いているところが何となく気に入って、1時間はかかる母の診察を待つ間、コーヒーで時間をつぶそうと入ってみたのが最初です。
今時の洒落込んだカフェとは違い、さほど期待していなかったのですが、入ってみると小さな店の奥にはピカピカに磨かれた大きな焙煎機がガラス張りの一角に鎮座しています。
「ここで焙煎してるんだ」
と感心し、その珈琲をいただけることに期待が高まりました。
テーブルも床も掃除が行き届いて光っています。
窓際のテーブルに座り、5品目ぐらいしかないメニューからホットを頼み、キリッとしたマスターと、一人しかいない客である私と、静かに1時間の時を過ごしました。
お日様がキラキラ反射した焙煎機も、両開きの窓から入り込む風に気持ち良さそうです。
2回目に訪れた時、黒板に目をやると何やら美味しい豆が入荷したとのこと。
「これは買わなきゃ!」
と、この日はお土産も楽しみです。
最初来たときは、お互い余計なことは一言も話さず沈黙の1時間でしたが、今回は豆も頼んだことでマスターと少し珈琲談義ができました。
コーヒーを飲み終えて、お土産に手渡された豆を見てみると、煎ったにもかかわらず大粒でサイズが揃っています。
そういえば庭先でマスターがザルいっぱいの豆をハンドピッキングしていました。
「焙煎して1日経った方がマイルドですよ」
とのこと。 お店の神経の向け方と、スローコーヒーがとても気に入りました。
次回も病院に母を連れて行くのが楽しみです。